中小企業やベンチャー企業もM&Aができるの?
*この記事では、M&Aに関するテクニカルな事はなるべくおいておいて、実際の現場で発生するであろう人間的な部分にフォーカスを合わせ書いています。*
世間を賑わすのは何百億や何兆円というM&Aですが、資金力の乏しい中小企業やベンチャー企業でもM&Aは活発に行われています。
私の経験では、高いものは数億からありますが、事業譲渡や株式譲渡で一番低い金額で650万円くらいから売買のお手伝いをしたことがあります。街のタバコ屋さんや喫茶店の売買等がありました。例外的に1円で株式譲渡という事はそれなりにありますが、それはまたの機会に説明します。
ウェブサイトやアプリになると、20万円くらいから売買されています。ウェブサイト単体だと高くても数千万がほとんどで、億単位でサイトのみの売買はあまり見たことが無いです。
とうでしょう、一気にM&Aはが身近に感じたのではないでしょうか?
なぜM&Aをするの?売り手の3つの理由
では、なぜM&Aで売買するのでしょうか。
まず売り手については大きく分けて3つの種類があります。
- 引退(体調不良や年齢)
- 事業の選択と集中
- IPO以外のEXITとして
M&Aの業界に入り意外と多かったのは自身の年齢以外の理由による引退です。両親の介護や自分の病気でひとまず事業を整理し数千~数億持って当座の資金にしたい、という相談はとても多いです。やむを得ない事情ですね。
そして最近はIPOよりスピードがあり、手取りも多くなることのあるEXIT目的のM&Aはとても増えてきました。
事業立ち上げの0から1ではまだ早すぎますが、0から10の事業化段階が好きな起業家は意外と、多くそれなりに事業として成り立つようになったら売ってしまい、それを資金にまた起業するという連続起業家が増えてきています。
実際に驚愕するような手元資金の増やし方をなし得てるのもこの人たちの印象です。
なぜM&Aをするの?買い手の3つの理由
では買い手はどういった理由でM&Aをするのでしょうか。
こちらも3つの理由に分かれます。
- お金で時間を買う
- 新領域(事業やエリア)に進出する
- 人を買う
まず時間を買う、についてですがこれはそのままですね。自分で人を育て事業を育て、とするより、すでに動いている事業を買った方が時間もリスクも少ないと考えた場合買収を選びます。
新領域については、関西に1店舗ずつ進出するより複数店舗買ったほうが効率がいいと考えたり、地域に馴染んだカンバンが欲しいなどがあります。新規事業を0から立ち上げるのがしんどい、というのも多くありますね。
最後に人を買うについてですが、最近はとてもこの理由が多いです。従業員の採用競争はとても激しくなる一方です。
さらに、一人を雇うとエージェントに想定賃金の35%、さらに人事部のコストとかなり資金的に厳しく、そうまでして雇った人が想定していたより能力が少なかった何てことも経験があるのではないでしょうか。
そこでM&Aですでに働いている人を事業ごと買ってしまおうと言うのです。
年収500万の人に払うコストが35%で175万円、30人いたら5,250万円です。これだけ転職エージェントに払うなら黒字事業ごと数億で買ってもいいなと判断することがあります。
チームごと受け入れでき、人的問題もリスク少なく買収した日からすぐに稼働できます。
M&Aをするときの注意点~売り手の場合~
ありとあらゆるところに注意しなければならないのは当然ですが、なんといってもこれでしょう。
嘘をつかない!!!
はい、これにつきます。どんなに些細なことでも、嘘と言えない嘘でも買い手の心が離れてしまう事がありますし、なにより我々アドバイザーの信用を無くしてしまいます。
M&Aアドバイザーも訴訟リスクがありますし、何より信用を大事にしますので嘘をつかれた途端離れていくでしょう。
自家用車だけど社用車としていた、働いていない息子の嫁に小遣いを渡していた、とか様々あると思いますが正直に話せば買い手はわかってくれますのでとにかく悪いことでも嘘をつかないことが大事です。
売り手は自分のことを売る、買い手は他人の事業を買うので圧倒的な情報格差があります。どんな小さなことも正直にいることが肝要です。
M&Aをするときの注意点~買い手の場合~
売り手と逆ですが、情報格差はどんなにがんばっても埋めることのできないリスクです。事業デューデリジェンスや法務デューデリジェンスを通しリスクを潰していきますが、どうにもスッキリしない事の1つや2つは必ずでてきます。
そこをエイヤっとリスクを飲み込めるかどうかが、事業を買収できるかどうかの差になることもあります。そういえばサントリーのジムビーム買収(2兆円弱)のハンコを押した代表者には頭が下がります。。。
顧問の弁護士や税理士の先生は、事業を買おうが買わまいが報酬に差がありませんので基本的にリスクを大きく言い自分を保身しますので、すべての話を聞いていたら全く話にならない事が多々あります。
買い手の注意点を解説するサイトは多々あると思いますので基本的な事は改めて別の機会で述べますが、買い手側に買収が進まないリスクが大きくある事も覚えておいてください。
M&Aの専門家がいる場合、いらない場合
基本的にどんな案件でも専門家のアドバイスは必要と考えています。
案件発掘、調査、価格交渉、大きい金額になれば各士業の方との連携、根回し等全てを社長のみ、社内人材のみで回そうとすると大変な負担です。
そして、特に大事なことはアドバイザー同士がお互いクッションになることで円滑に売買収を進められることも多々あります。
高く売りたい売主と安く買いたい買主なので、クッションとなれるアドバイザーがいないとどうなるか、想像に難しくないと思います。
ただ、アドバイザーを雇う時は着手金の有無、報酬体系等はしっかり比較し検討する必要があります。
いざ売却!企業価値は?
企業価格の算定方法は数式的に何パターンかありますが、実際には相場や人気、買い手の意識により数倍~数十倍差が出る事があります。
特にIT系では、社員2~3人の会社が上場企業に10億以上で買収されたなんてことも起こっていますが、ピンポイントでニーズと合致した場合はそういうことも起こりえます。
無料査定サイト等ありますが、はっきり言って中小ベンチャーの場合外部環境による影響が強く全くあてにならないと言っていいでしょう。
弊社でも行ってますが、できればしっかりヒアリングし、企業価値を見積もってから売却を検討してもらいたいです。
いざ買収!高値で掴まされてない?
中小ベンチャー企業において、売却価格=売主の売りたい値段と言っていいでしょう。なぜなら、上場企業のような市場が無く全ては相対取引だからです。
買い手においては、売り手の希望額からいかにロジカルに値下げ交渉をしていくかが重要ですが、買収後にはとて大事な引継ぎ業務もあります。
気持ちよく引継ぎをしてもらうために、100万円値下げ交渉を粘り強くすることが大事なのか、よく検討した方がいい場合もあります。
ここらへんのさじ加減はとてもむずかしいところかと思います。
まとめ
中小企業、ベンチャー企業のM&Aはとにかく人間臭いところがたくさんあります。自分が育てた思い入れのある会社、事業を売却するのですから、子供を嫁にやるようだ、なんてよく言われたりします。
買い手はとにかくドライになりがちなので、最後の最後で売り手の子供を嫁にやる親の気持ちを汲んであげる事が非常に大事になる場面が必ずでてきます。
金額交渉はまさしく娘を値踏みされるようなものと思い、慎重にM&Aの交渉をすすめて行くことが大事です。