為替は貿易会社最大の悩み
今回のクライアントは輸入を主としている貿易会社です。
年間のドル取扱量は600万ドル(現在のドル=111円とすると6億6000万円ほど)です。
卸売ですので粗利は10%程であり、細かな経費削減が業績に大きなインパクトを与えます。
このような企業でいかに為替手数料を削減するのか、90%削減した手法をお伝えします。
為替は監査法人相手でも開示しないブラックボックス
輸出入する会社にとって、為替は業績に大きな影響を与えるファクターであり、社内でどう対処しレートをきめているのかは上場企業の場合監査法人相手でも開示しない、と監査人に聞いたことがあります。
想定社内レートの公表はしますが、実際にどう為替を手配しているのかは聞いたことありません。
為替がわかれば同業者からすれば粗利がわかり、見積もり額も推定できてしまいますから。
為替レートはどうやって決めるのか
弊社がコンサルに入る前は、商品輸入後30日以内に海外へ送金するオーソドックスな方法をとっていました。
発注から輸入までタイムラグがあり、資金繰り面から支払いサイトはできるだけ伸ばしたいため支払いもギリギリまで伸ばしますが、その間にも為替レートは変動しますのでいつまでも仕入れ値が決まらない不安定な状況でした。
そこで、まずは為替予約という一種のデリバティブ取引ができるよう銀行と交渉し、1億円の為替予約枠を獲得しました。(現在では売上も伸び、9億までの為替予約枠を獲得しています。その交渉方法はまた別の機会に投稿します)
為替予約とは、「○月○日にドル=110円で○○○ドル買う」という約束を銀行と取り交わす取引です。
この為替予約取引が銀行とできるようになったという事は、銀行は数カ月先のクライアントの資金に対し信用してくれているという事であり信頼関係が築けたという事とも言えます。
その間、借入や日々の資金繰り等の相談、報告等を通じさらに信頼関係を築いたところで次は本丸の為替手数料の削減交渉に入ります。
為替手数料は削減できるのか?
皆さんがよくニュース等で見る為替レートは「その瞬間」での為替取引が行われているレートが表示されていますが、企業銀行間ではTTSと呼ばれる「その日」の為替レートで取引することが多いです。(取引額が多い場合その瞬間の為替レートで市場から調達する相対取引をする事もあります)
TTSは、TTM(仲値)と呼ばれる金融機関が決める基準レートから、ドル円の場合1.00円を上乗せた額となります。TTMが111円の場合、会社は+1円乗せた112円でドルを買います。
このクライアントの場合、年間600万ドルの取引でしたので銀行への手数料で600万円も払っていたことになります。粗利が10%ということは6600万円であり、為替手数料で粗利の約10%も削られていたという事ですね。
そこで、日々の取引や為替予約等を通じ築いてきた信頼関係と、実はその間に為替に強い金融機関とも新たに取引を始めており、今後の為替取扱量の増加を事業計画書で示しシェア争いを促し段階的に手数料を削減し、現在では90%の手数料削減(TTMに対し0.10円)を達成しました。
まとめ
このクライアントにおいては、コンサルに入った初年度で600万円削減し、その後も業績拡大に伴い為替取扱量が増え、現在は1,000万ドルを超える為替取引になっていますのでコンサルに入る前と比べ毎年1000万円以上経費を削減できています。
具体的な削減方法は交渉しかないのでなんとも伝えづらいのですが、いかにメイン銀行と信頼関係を築きつつ、いかにメイン銀行が嫌がる(ライバル視する)金融機関を連れてきて削減競争をさせるか、が全てです。
このように通常削減できると思わない為替手数料等を削減していくのもCFOの仕事です。
弊社は為替手数料削減の他、為替予約、クーポンスワップ、通過オプション、長期為替予約や特約付き外貨定期預金等外貨周りの様々な交渉、手法立案も得意にしております。
※クライアントの許可を得たうえで記事にしております。
※全ての会社において為替手数料を90%削減できるわけではありません。